天井クレーンの使用等級(FEM / ISO)を解説
クレーンの使用等級A1〜A8(FEMおよびISO M級)とは何か、どう算定するのか、正しい等級選定がなぜ投資を守るのかを解説します。
執筆 サノマック技術チーム

クレーンの使用等級は、そのクレーンが生涯にわたってどれだけ酷使されるかを定義します。正しい等級を指定することは決定的に重要です。過少に指定すればクレーンは早期に摩耗し、過大に指定すれば使わない能力に費用を払うことになります。
使用等級が表すもの
使用等級は2つの要素を組み合わせたものです。荷重状態(定格荷重に近い荷をどれだけ頻繁に吊るか)と利用度(生涯で何時間、何サイクル稼働するか)です。
A1〜A8のスケール
中国GB規格ではA1からA8の等級を用い、これはFEMの作業グループ(1Am〜5m)およびISOのM級(M3〜M8)とほぼ対応します。
- A3〜A4 — 間欠的な軽荷重。保守用途や稼働率の低い工場。
- A5 — 定常的な中荷重。一般製造業や倉庫。
- A6 — 高頻度の重荷重。稼働の多い鉄骨加工・機械工場。
- A7 — 連続運転の重荷重。鋳造工場や鋼材ハンドリング。
- A8 — 定格荷重付近での連続運転。鋳造クレーンや溶湯クレーン。
2つの要素の組み合わせ方
荷重状態はQ1〜Q4に区分されます(FEMではL1〜L4)。Q1はクレーンが定格荷重に近づくことがほとんどない状態、Q4はほぼ毎回定格荷重近くを吊る状態です。利用度はU0〜U9で、設計寿命全体の吊上げサイクル数を表します。U4は約125,000サイクル、U6は約500,000サイクルです。
この2つを掛け合わせて作業グループが決まります。軽い荷を非常に頻繁に吊るクレーンが、重い荷をたまに吊るクレーンと同じ等級になることもあります。「どれだけ重いか」だけでは決して答えが出ないのはこのためです。
計算例
鉄骨加工工場の10トンクレーンが、平均4トンの荷を1交代あたり20回、1日1交代、年間250日、20年間吊るとします。これは定格の約40%で100,000サイクル、つまりQ2/U4となり、A5に該当します。同じクレーンを3交代にすると300,000サイクルに達し、A6へ上がります。定格荷重もスパンも同じでありながら、ホイストと構造は実質的に別物になります。
等級が上がると何が変わるか
- 巻上機構 — 減速機が大型化し、ロープドラムが大きくなり、ロープ安全率が上がります。
- モータ — 定格使用率が上がり(25%から40%または60% EDへ)、1時間あたりの始動回数も増えます。
- ブレーキ — 熱容量が大きくなり、A7以上では冗長な2台目のブレーキが加わることも多くなります。
- 車輪とレール — 接触応力を疲労限度内に収めるため車輪径が大きくなります。
- 構造 — 主桁は静的強度だけでなく疲労に対しても照査されます。
間違えた場合のコスト
高くつくのは過少指定のほうです。A4のクレーンをA6の用途で使っても、劇的に壊れるわけではありません。摩耗するのです。ブレーキライニングは数か月ごとに交換が必要になり、減速機は発熱し、ロープ寿命は激減し、やがて主桁とサドルの溶接部に疲労亀裂が現れます。その頃には、ダウンタイムの損失が正しいクレーンとの価格差をはるかに上回っています。
過大指定は単なる無駄ですが、無料ではありません。クレーンが重くなれば車輪荷重が上がり、想定していなかった走行桁の補強が必要になることがあります。
業種別の一般的な等級
どう指定すればよいか
サプライヤーには次を伝えてください。定格荷重に対する平均荷重の割合、1日あたりのサイクル数または稼働時間、そして想定使用年数です。ここから適切なFEM/ISO等級が決まります。合意した等級は必ず契約に明記してください。実際に届くものを最も左右する一行です。
判断に迷う場合は工程を共有していただければ、当社で算定します。当社が製作する天井クレーンと門型クレーンはすべて明示された等級に基づいて設計され、その計算書は納入資料一式に含まれます。
