単桁と複桁の天井クレーン:選び方
単桁と複桁の天井クレーンを、定格荷重・揚程・コスト・使用等級の観点から実務的に比較し、最適な橋形クレーンの仕様決定を支援します。
執筆 サノマック技術チーム

橋形クレーンの仕様を決めるとき、最初に判断すべきことのひとつが単桁にするか複桁にするかです。どちらも実績のある規格準拠の構成で、正解は定格荷重、揚程、使用等級、予算によって決まります。
何が違うのか
単桁天井クレーンは1本の主桁を使い、ホイストトロリが下フランジを走行します(サスペンション式)。複桁天井クレーンは2本の主桁を使い、トロリは桁の上、2本の間に敷かれたレール上を走行します。
定格荷重とスパン
単桁クレーンは20トン程度まで、スパン30 mまでであれば経済的な選択です。それを超える場合や非常に長いスパンでは、複桁設計が必要な剛性をもたらします。複桁クレーンは500トンまで実用的です。
揚程(フック高さ)
複桁クレーンはトロリが桁の上に載るため、フック高さを余分に稼げます。屋根近くまで吊り上げる必要がある場合に有利です。サスペンション式トロリの単桁クレーンは揚程をわずかに犠牲にする代わりに、構造全体の重量を抑えられます。
使用等級
工場や倉庫でよくある軽・中荷重(A3〜A5)であれば単桁クレーンが最適です。製鉄所や鋳造工場のような重荷重・高頻度運転(A6〜A8)では複桁を選んでください。
コスト
単桁クレーンは軽量で建屋への車輪荷重も小さいため、購入費、据付費、走行桁の費用を抑えられます。複桁クレーンは高価ですが、単桁設計では実現できない定格荷重、揚程、耐久性が得られます。
走行桁と建屋への影響
比較はクレーン本体だけでは終わりません。単桁クレーンは軽いため、走行桁や柱に伝わる鉛直・水平荷重が小さくなります。既設建屋ではこの差が結論を左右することがよくあります。同じ定格荷重でも複桁クレーンにすると走行桁の補強が必要になる場合があり、その土建工事費がクレーン本体の価格差を上回ることもあるからです。
サプライヤーには早い段階で最大車輪荷重とホイールベースを確認してください。構造設計者は設計を確定する前に両方の数値を必要とします。これらをすぐに提示できないメーカーは要注意です。
保守のしやすさ
複桁クレーンではトロリが桁の上を走行するため、橋に沿って走台を設けることができ、ホイスト機構にクレーン上から手が届きます。単桁クレーンではホイストが桁の下に吊られており、日常点検には高所作業車や足場が必要になるのが普通です。2交代・3交代で稼働するなら、この差は20年の使用期間で無視できません。
補巻と特殊アタッチメント
荷を反転させたり傾けたりするために2つ目の小さなフックが必要な場合 — 製鉄・冶金や機械工場でよくあります — 複桁の橋であれば取り付ける余地があります。グラブ、マグネットビーム、旋回フック、Cフックなども格段に搭載しやすくなります。単桁クレーンでもアタッチメントは使えますが、積載能力とヘッドルームの余裕は小さくなります。
実際の使い分け
当社が物流センターや一般工場へ出荷する天井クレーンの多くは単桁で、スパン15〜25 mで5〜16トンが典型です。32トンを超えるものや、炉・鋳造ラインに関わるものはほぼすべて複桁です。欧州式FEM/DINクレーンはその中間に位置し、コンパクトなサドルと低ヘッドルームのホイストを備えた単桁設計で、通常の単桁が犠牲にするフック高さの多くを取り戻します。
簡易判断の目安
- 単桁を選ぶ場合:定格荷重20 t以下、軽・中荷重、予算重視、標準的なヘッドルーム。
- 複桁を選ぶ場合:定格荷重20 t超、重荷重・連続運転、フック高さを最大化したい、補巻が必要。
見積依頼の前に答えておきたい5つの質問
- 最も重い単一荷重は何トンで、その頻度はどれくらいか
- レール間のスパンはいくつで、走行桁は既設か新設か
- 屋根鉄骨下の有効高さはどれだけあるか
- 1時間あたり何回吊るか、何交代で稼働するか
- 将来、補巻や特殊アタッチメントが必要になる可能性はあるか
この5つに答えれば、桁形式はおのずと決まります。定格荷重、スパン、使用条件をお送りいただければ、当社の技術者が最も費用対効果の高い構成をご提案します。複桁で見積もられた仕事を欧州式単桁でこなせるかどうかも含めてご回答します。
